保井椋香三十四歳。東京のとある企業に勤めてたごく普通のOLであった彼女が行政書士を目指したきっかけは同じ職場で働いていた同僚からの一言から始まった。口下手で極度のあがり症である彼女は人と接しない業務に関しては非常に優秀なのに対してプレゼンや企画会議などなにか自分の意見などを言う場面になるととたんに何も出来なくなってしまう。そのためか長身で目鼻立ちも整っていて華があるにもかかわらず、できるだけ目立たない格好で人との関わりを極力避けるような生活を送っていた。そんな彼女にある転機が訪れる。いつものようにひっそりと職務をこなしていると緊急の企画会議が行われることになり慌てふためき動揺していると同僚から声をかけられ「あがり症が気になるなら事務職とかあったんじゃない?」彼女の容姿と能力に少なからず男性職員の人気はあったため女性の同僚が嫉妬から来る嫌味を投げかけた言葉だったがそれは彼女に別の意味で刺さってしまった。何も無理をしてこの仕事をする必要はないと彼女を決心させる一言であった。その日彼女は辞表を提出して数ヵ月後には行政書士の資格を取得していた。そして、そんな彼女を支えていた男性と入籍も果たし彼女は新しい人生を歩み始めた。だが、現実はそううまく事を運ばせてはくれなかった…行政書士の資格を得たものの求人を探せど行政書士の資格を生かせる職が見つからない。ほとんどが独立で開業をして業務を行っていくような業種なのでそもそもほとんど求人が無いのが現実。今まで勤めていた会社の給料に見合うだけの職はどれも条件が厳しく、夫の給料だけではこの先、不安定になるのがまざまざと彼女に現実を突きつけた。焦り職を探すも見つからない求人。いっそ独立も考えたが貯金をそちらにまわすと失敗したときに負うリスクがあまりにも高いことと人と接することが苦手で仕事を辞めたのに本末転倒になってしまう。それらが回り続けて数年の月日が流れた。彼女は見知らぬ場所で見知らぬ男性とともにベッドに腰かけている。男が手を伸ばせば簡単に押し倒せてしまうくらいにその距離は近く、彼女はぎこちなく会話をしていた…
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